ヴェン先生!お父さんと遊んでいた時に手を噛んだり、服を噛んだりしていたらいきなり「いけない!」と言って鼻をつかまれました。怖くてその後お父さんに近づくのをためらっています…。どうしましょう? |
ヴェン先生:う〜ん。実はこうゆうことはよくあるんだよ…。
相 談 犬:よくあることなのですか?
ヴェン先生:うん。この鼻をつかむという方法は、昔から行われている方法でマズルコントロール
と言われる方法。母犬が、子犬をしかる時にマズルを噛むから子犬が悪いことをした
らマズルをつかむことで、その行動はいけないことだと伝えたり、マズルコントロー
ルができることで上位であることを伝えるという意味があるらしい。
相 談 犬:お父さんも私たちのために本を読んだり、聞いたりして勉強をしてくれています。
だけど…。
ヴェン先生:そうだね。昔のしつけ本や昔の訓練(昔はしつけというより愛犬の訓練と言われてい
ました。なのであえてここでは訓練と言っています。)、わんちゃんのことを理解せ
ず、服従を主としたしつけ教室などでは、そのように教えているようだね。
しつけをはじめて行う飼い主さんたちからすれば、頼りはじめた本や教室でそのよう
に言われてしまえばやらないわけにはいかないからね。
相 談 犬:昔のしつけ本?昔の訓練?服従を主としたしつけ教室?昔は、そのような方法が普通
だったのですか?
ヴェン先生:普通だった…。
これは、オオカミの習性を利用した方法と言われているのだ。上下関係をはっきりさ
せるために上位のオオカミが下位のオオカミのマズルを噛む(と言っても、咬むでは
ないのだが。)と言われている。昔のしつけは、しつけというより訓練的な考え方が
強く、力関係や上下関係、服従関係をどのように教えるかが中心だった。簡単に言え
ば「人の方が偉いんだから犬に負けてはいけない。だからこそ「力づく」でもやらせ
なければならない。といった感じだ。実際、オオカミの世界は違うのだが…。
相 談 犬:ヴェン先生…。なんですかそれは…。
確かに僕たちの祖先はオオカミと言われています。
でも、僕たち家庭犬(犬)はオオカミではありません!
ヴェン先生:そうなんだよ。私たちはオオカミではないのだ。オオカミの研究がされ、たくさんの
ことがわかるようになってきた。しかし、100%オオカミではない私たちにオオカ
ミ論をこじつけて訓練として行ってきたのだ。オオカミの研究ですら日々進歩してい
る。そのような時代にいつまでも最初の頃に言われていた「間違っているであろう行
動の解釈」を私たち犬にいまもなお、行おうとしていることもあるのだ。
非常に残念なことだけど…。
相 談 犬:じゃあ、マズルをつかんで「いけない」と言ってやめさせられることは
間違っているのですか?
ヴェン先生:はっきり言えば間違っている。
オオカミ世界では上位のものが下位のものに対して直接的に接触をして上下関係や服
従心を植え付けることはしない。いいかい、大切な部分だよ。上のものが下のものに
対して何かをするのではなく、下位のオオカミがが上位のオオカミに対して様々なサ
インを送ることでコミュニケーションを取ってるいるのだよ。(上下関係という考え
方であるならば)
相 談 犬:あっ!わかるよ。ストレスサインや服従のサインですね。
ヴェン先生:そう。オオカミは基本的に争いごとを起こさない。多少のことで争いごとを起こして
いると生命に関わるのだ。自らの遺伝子を残すことを重要と考えているオオカミが自
ら争いごとを起こしてケガをしたり、命を落としたりしてはなんの意味もなくなる。
だからこそ、様々なサインや回避、逃避行動を行って争いごとをさけるのだよ。
相 談 犬:そうですよね!
ヴェン先生:ただし、争いごとを自ら起こすときがある。繁殖の時期だ。この時期は、上下関係な
く争いごとが起きる。少しでも自らの子孫を残すためだ。このときばかりは、命がけ
で争う。この争いに負けたオオカミが群れにいられなくなり、一匹狼として人の近く
で残飯を食べたりしたことで、人と暮らすようになった理由とも言われておる。
相 談 犬:ヴェン先生。僕は、何も争いをしたくてお父さんを手を噛んだりしたのではないので
す。只単にそうしたかっただけなのです。
ヴェン先生:そうだね。子犬の時期には「甘噛み」と言われる遺伝子に組み込まれたしなければい
けない行動がある。正常な子犬であれば当然誰もが行う行動。この行動をしない方が
本来、異常と考えるべきで早めに専門家に相談をした方が良い。
相 談 犬:じゃあ、お父さんの手を噛んでも良いんですね!
ヴェン先生:それはダメじゃ。口の使い方や噛み方、噛む強さや歯の成長には「甘噛み」をしなけ
ればならない。だからといって人を噛んでも良いとはならない。本来であれば兄弟と
この行動をして様々なことを学ぶ。この機会がなく人のところへ来た子犬たちは、人
以外で噛んで良い物を噛むことで学ばなければならないのだよ。
相 談 犬:人や人の衣服などは噛んではいけないのですね。
ヴェン先生:そう。だからこそ飼い主さんたちが用意した噛んでも良い物を噛むようにしていく必
要がある。もちろん噛んでも良いおもちゃを楽しく噛めるように飼い主さんたちが努
力していく必要はある。
そして、痛みがなくても人のどこかを噛ませているという経験がないようにしてもら
うこと、どこでも嫌がらずに触れるようにしておくことが大切だね。
相 談 犬:飼い主さんたちが、なぜその方法が良いのかしっかり知ってくれれば、僕たちも怖が
らずにすむということですね。その方が僕たちも楽しい暮らしができると思います。
ヴェン先生:そうだね。恐怖や不安、威圧や脅し、抑制で教えた場合、恐怖性の攻撃行動を起こし
てしまうイヌもいるのが現実だからね。そういった対応をしていたことで攻撃的にな
てしまったイヌたちをたくさん見てきた。
この場合の攻撃は「恐怖性の攻撃行動」と言って自分の身を守るために仕方なく攻撃
をする。決して支配的な攻撃行動ではないのだ。
ヴェン先生:子犬たちに抑制や恐怖などを主体としたしつけを行うことで6ヶ月から1年以降に攻
撃行動が起こる可能性があります。この攻撃は、飼い主さんを馬鹿にしているわけで
もなく、イヌたちが上になったから起こる攻撃行動ではありません。
詳しくは、「ヴェン先生から飼い主のみなさんへ甘噛みについてお伝えします。」を
ご確認下さい。